現状ではエヌビディアの決算後の下落やジャクソンホールでのパウエル議長の「時がきた」との利下げを織り込んだ発言など投資家にとって明暗を分ける出来事があり、さらにレイバーデイ明けになる9月がはじまりました。
そんな中で投資の勉強をさせていただいている広瀬隆雄さんが短期の見通しを述べられているインヴェスト証券のサイトで「アメリカのマーケット展望」の2024年9月版が出ましたので私たち投資家が確認しておきたい点をシェアさせていただこうと思います。
ということで今回は「広瀬隆雄さんのアメリカのマーケット展望【2024年9月度】」についてです。
またAIブームについてトウシルの最新記事でお考えを出されていましたのであわせてポイントのみシェアさせていただきます。
【この記事をみて分かること】
・米国経済の現況について
・企業業績について
・注目の決算について
・AIブームの現状
・短期の相場見通し
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米国経済の現況について
米国経済は相変わらず好調ですが市場参加者は失業率の上昇に懸念を抱いると言っていて、経営者は景気減速に備えるため先ず求人広告を絞り込むことでこれに対応している一方、労働者の方も(いまは軽はずみに転職すべきでない)と感じていて離職(=自主的に会社を辞めること)率も下がっているとのことでした。
上記画像はFRED(FRBが提供する経済指標)の失業率データになりますが直近は上昇しはじめています。ちなみにグレーの部分は景気後退を示していて赤矢印で示しているように失業率が上がるともれなく景気後退に入ってきていました。
そして赤丸で示してますが現在は失業率が上昇してきていますので過去のデータから市場参加者も失業率には注視しているのではないでしょうか。
また広瀬氏はそのような事情から労働市場の過熱感はすっかり払拭されて、今後は賃金インフレが全体の物価を押し上げるようなことも無くなると思うと言っていました。
経営者は新型コロナ後の経済再開時に人材の確保に苦労した経験から、いま人員削減することには消極的です。それもあって雇用に対する不安は未だそれほど広がっておらず、その関係で消費は引き続き堅調だと仰っています。
ちなみに2024年8月30日にロイターが「米新規失業保険申請、2000件減の23.1万件 予想以上に減少」と報じていました。
内容は米労働省が29日に発表した8月24日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は、前週比2000件減の23万1000件とエコノミスト予想(23万2000件)をわずかに下回っていました。
ブリーン・キャピタルのシニア経済アドバイザー、コンラッド・デクアドロス氏は「失業保険申請件数はほぼ横ばいで、解雇増加の兆しは依然として見られない」と述べたとのこと。
ここでも同様に解雇増加に兆しは見えないと言っている中で失業率が上昇傾向ですので、米国経済と反対に労働市場には注視しておく必要性があるのではないでしょうか。この点はこのブログとXでできるだけ最新の情報を発信していこうと思います。
企業業績について
去年から今年にかけてS&P500指数採用企業の一株当たり利益(EPS)は+10%成長すると見られていて、米国の企業業績はそれなりに堅調だと広瀬氏は言っています。
また年初来の株価指数の上昇は+18%なのでEPSの伸びよりも株価の上昇が大きく、その分で米国市場の株価収益率(PER)は高くなっているとのこと。
向こう12ヶ月のEPSに基づいて約21倍でトレードされていて、これは過去10年の平均(17.5倍)に比べるとやや割高ですが、我慢できる範囲内だと広瀬氏は述べていました。
特に今後FRBが利下げに転じるのであればそれが株式バリュエーションを下支えをしてくれるとも言っていて、そのようなことを総合すれば大きな波乱は予想されないと仰っていました。
注目の決算について
前章の企業業績にも繋がるのですがここ最近で一番投資家に注目された決算ははエヌビディアではないでしょうか。この決算から見えてきた点を8月23日のトウシルで「冷めつつあるAIブーム」で言及されていましたのでシェアしておきますね。
広瀬氏が記事を書かれた時期は決算前でしたのでまずは結果をお伝え致します。
【売上高】
予想288.6億ドル 結果300.4億ドル ⇒ 〇クリア
【調整後EPS】
予想0.64ドル 結果0.68ドル ⇒ 〇クリア
【8-10月期売上高見通し】
予想318.5億ドル 見込み325億ドル(±2%) ⇒ 〇クリア
2Qの結果は売上高、調整後EPSとも市場予想を上回りました。さらに500億ドルの自社株買いを発表しましたが引け後の取引で株価は一時8%ほど下落していました。さらに3Qの見通しで売上高は市場予想を上回りましたが、投資家にはこれまでの期待値が高まり過ぎていたため「期待外れ」と捉えられてしまいました。
ものすごい事象だと個人的にはかなり驚いていて、それだけ投資家の中では期待が膨らんでいたことが分かりました。
では次章より広瀬氏の見解をまとめておきますね。
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AIブームの現状
前章ではエヌビディアの決算結果についてでしたがその顧客であるアマゾン、アルファベット、マイクロソフト、メタなどの大型ハイテク企業が中心で、それらの顧客企業は既に決算発表を終えています。またこれらの企業の決算カンファレンスコールでのコメントはAIに対してやや抑え気味で、言い換えればセンチメントは少し悪化していると広瀬氏は述べていました。
唯一の例外はメタで同社は2024年度の設備投資額をこれまでの350〜400億ドルから370〜400億ドルへ下限を引き上げています。また2025年の設備投資額に関しても2024年より増額を見込んでいるとのこと。
さらに広瀬氏はそれ以外の大手ハイテク企業はメタとは違うビジネスモデルを採用していると述べいていました。具体的にはデータセンターに設備投資するとそのキャパシティをAIスタートアップ企業へ貸すことで売上高を上げていて、大家さんのような役回りだと。
そしていまベンチャー・キャピタルは先を争って新興AI企業に投資していて、大手ハイテク企業の提供するデータセンターのサービスをどんどん契約しています。
なぜなら大企業に対してAI導入の提案をすることは意外にハードルが高く、アルファベットのような大手ですら「大企業向けの営業は、まだまだやらないといけない課題が山ほどある」とフラストレーションを隠していないからです。
いまのところパランティア(ティッカーシンボル:PLTR)だけがAIの商機をガッチリ捉えることに成功しているとの見解でした。
つまり大手ハイテク企業の第2四半期の決算カンファレンスコールではメタを例外として各社AIに対しやや慎重な態度を打ち出しました。
これはエヌビディアのように高価なGPUを売っている企業にとってアウトルックがやや不透明になっていることを意味すると広瀬氏は仰っていました。
これがAIブームが減速した理由だとの見解を述べられていました。ではこのような市場の中で広瀬氏が考える短期的な見通しについて次章でまとめておきますね。
短期の相場見通し
まずは広瀬氏が考えるS&P500指数の向こう1ヶ月のターゲットは5,600とされていました。
上記チャートの赤線(太枠)あたりになりますのでこの記事を作成している2024年9月3日現在より少し下がる予想になります。
また広瀬氏はS&P500指数は7月16日に5,669.67の天井を付けた後、8月5日のザラバ安値5,119.26まで−9.7%の調整を演じた後にV字型に回復し過去最高値にあと一歩の水準まで戻している点を言及していました。
そして9月は基本的にこの水準で横ばい、一進一退の展開を予想とのこと。その後、年末にかけてはじりじり高い相場を想定していて、言い換えれば秋相場に深押しは無いと考えられているようです。
また利下げについては8月23日にパウエル議長はジャクソンホール経済シンポジウムでスピーチし、9月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)から利下げすることを明言しましたが、現在米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは5.25〜5.50%ですが、これが9月18日は0.25%引き下げられ、5.00〜5.25%になると広瀬氏は予想されています。
その後の展開に関しては先物市場のトレーダー達は11月12月にも更に利下げが行われ、年内に合計−1.00%の利下げがあることを織り込んでいますが、この利下げ幅は楽観的過ぎると広瀬氏は考えています。おそらく年内の利下げ幅は−0.50%だと思うとのことでした。
いずれにせよ連邦準備制度理事会(FRB)は利下げする用意があるため、もしマーケットが急落する素振りを見せてもFRBが利下げでそれに対応することが予想されるため、いわゆる「パウエル・プット」の存在が指数を下支えすると考えられます。私が秋相場に深押しは無いと考えるひとつの理由はこれだと。
なお9月の相場は一進一退を予想していますが、バイアスは「上」ですので基本、マーケットにはロングの姿勢で臨むべきだと仰っていました。
いかがでしたでしょうか。
9月はレイバーデイ明けとなり下落しやすいアノマリーがある月として知られています。また毎年ですが9月~10月は比較的落ちやすい傾向にあると考えられる方も多いのではないでしょうか。
広瀬氏が仰る通りで「9月は基本的にこの水準で横ばい、一進一退の展開」はそこまでのズレがなくいくと個人的には感じていますが、この点についてみなさんはどうお考えでしょうか。
直近での見通しにはなりますがぜひ参考までに確認をしておいていただけると幸いです。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました!
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